かひのしづく

文学・映画・ドラマ・日々のことなど

文学

モーリス(2)愛の諸相

愛が終わる時、何が起こるのか 小説『モーリス』の中で描かれているのは同性愛傾向のある青年モーリスの成長の軌跡です。 モーリスとクライヴは、クライブからの愛の告白をきっかけとして恋人同士になりますが、その後クライヴは突然異性愛者に転向し、二人…

ハワーズ・エンド(2)人生の座布団

E.M.フォースターの小説『ハワーズ・エンド』には、異なる階級の人間たちの交流が描かれています。主人公であるシュレーゲル姉妹は十分な財産があり、裕福なので仕事をする必要がなく、インテリとしての生活を十分に楽しんで生きていける立場にあります。所…

ハワーズ・エンド

現代にも通じる多くの示唆にあふれた作品 フォースターの長編の中で『ハワーズ・エンド』もまた大好きな作品です。淡々と過ぎていく家族の物語に見えて、その実、当時のイギリスの置かれていた状況と、その将来の姿が浮かび上がってくるように感じられます。…

源氏物語の女君

あなたならどうする? 私は一応大学時代に国文学を専攻していまして、近世(江戸)文学で卒論を書きましたが、源氏物語についてもほんの少し勉強し、レポートなども書いたことがあります。ですが、まあ、源氏物語といえば『あさきゆめみし』という素晴らしい…

モーリス(Maurice)

作者の死後に発表された小説 『モーリス』はE.M.フォースターが1913年に執筆した小説です。 ですが、同性愛をテーマにした作品であったため、執筆当初は発表されず(作者の少数の友人たちには読んでもらっていたようですが)、作者の死後に出版されました。 …

ロンゲスト・ジャーニー(2)

🐰「話し合える時に会いに行くのさ」📖 英国作家E.M.フォースターの作品『ロンゲスト・ジャーニー』には、素晴らしい言葉がちりばめられています。就中、私が好きなのは、アンセルの次のような台詞です。

ロンゲスト・ジャーニー

作者の同性愛傾向が感じ取れる名作 『ロンゲスト・ジャーニー』という作品について、作者のE.M.フォースターは「書いたことを最も喜んでいる作品」と述べていたようです。 個人的な感想ですが、作品の完成度、という意味では『ロンゲスト・ジャーニー』はハ…

E.M.フォースターのこと

1900年代初頭のイギリスを描いた作品 2017年、ノーベル文学賞を受賞したことで、カズオ・イシグロ氏が注目を集めましたよね。イシグロ氏の『日の名残り』という作品は1993年にジェイムズ・アイボリー監督により映画化され、アンソニー・ホプキンスとエマ・ト…